医療機関でも注目されているアロマテラピーの効果

心血管疾患は、世界的に最も高い罹患率と死亡率であると考えられています。それ故に、疾患そのものに加えて、心理的なストレスも大きく、疲労、不眠などが患者さんを苦しめます。

 

そして、心理的なストレスに長期間曝されると、免疫系が弱り、さまざまな疾患にかかりやすくなり、また、その予後にも悪影響が及ぶことがわかっています。したがって、これらのストレスを軽減して、患者さんの精神心理面での健康を維持することが大切だと言われています。

 

心理的ストレスの軽減方法として、医薬品の使用は副作用のために、最良の方法ではなくなっており、補完医療が注目されています。その一つがアロマテラピーで、世界中の医療機関で導入されています。心血管疾患に絞り、どのようなアロマテラピーが有効であるかを調べた研究があるので紹介します。1380の論文のうち52の論文がレビューの対象になりました。

 

医療機関でのアロマテラピーは、導入に簡便であることから、主に芳香浴が用いられてきました。そして、使用される精油はラベンダーLavandula angustifolia、ローズRosa damascena、ペパーミントMentha piperitaの順でした。リラックス作用があるエッセンシャルオイルとして最もよく知られているラベンダーが半数以上(55.7%)使用されていたことは想像に難くありません。他にはプチグレンやブレンド精油なども使用されていました。

 

酢酸リナリルやリナロールを多く含むラベンダーは、さまざまな研究により、不安やうつを改善し、GABA受容体に作用して鎮静作用を示すことがわかっており、睡眠の質を向上させることが示唆されています。

 

ローズは嗅覚系を刺激して副交感神経の働きを優勢にし、エンドルフィンなどの神経伝達物質を放出し、交感神経活動を低下させてコルチゾール、ノルアドレナリンを放出させることがわかっており、痛みや不安、睡眠の質の改善に有効であることが示唆されています。

 

ペパーミントは清涼感のある香りの性質から、吐き気を抑える精油として有名ですが、最近の臨床研究では、不安の軽減、痛みの緩和、リラクセーション効果、脈拍の安定化、睡眠の質の改善が報告されています。

 

これらの精油を用いたアロマテラピーが患者さんの生活の質を改善するのに有効であると結論づけられました。

 

Reference:

AlMohammed, H. I., Alanazi, N. A., Maghrabi, E. F. & Alotaibi, M. A. (2022) Role of Aromatherapy as a Natural Complementary and Alternative Therapy in Cardiovascular Disease: A Comprehensive Systematic Review, Evid Based Complement Alternat Med, doi: 10.1155/2022/4543078