第2回 ラベンダー Lavandula angustifolia

最も基本的なエッセンシャルオイルで、用途が広くて使いやすく、優しい香りに癒されます。
Lavandula angustifolia
Lavandula angustifolia

■学名:Lavandula angustifolia / Lavandula officinalis

■科名:シソ科

■抽出部位:花

■抽出方法:水蒸気蒸留法

■特性成分:

酢酸リナリル(エステル類)35~45%

リナロール(モノテルペン・アルコール類)25~30%

酢酸ラバンジュリル(エステル類)4~6%

クマリン(クマリン類)痕跡量 など

特徴

アロマテラピーにおいてラベンダー(真正ラベンダー)は最も基本的なエッセンシャルオイルで、その用途は多岐にわたります。原液のまま使うことのできる数少ないエッセンシャルオイルの一つで、毒性がなく、他のエッセンシャルオイルとも相性がよくてブレンドしやすいのが特徴です。

 

ラベンダーが配合されたブレンドオイルの香りを嗅ぐだけで、存在感がありながら、決して他を押し退け、出しゃばるようなことはせず、他のエッセンシャルオイルの個性を引き立てつつ調和をつくり上げるという離れ業ができる、まさに例外的な資質を持っています。

皮膚に塗るためのローション、マッサージオイル、あるいは芳香浴用ブレンドオイルを調合しているとき、香りをかいでいまひとつまとまらない……、と感じたときにラベンダーを少し加えると見事に調和します。

 

皮膚塗布、芳香浴に使うあらゆるブレンドに対して、ラベンダーを加えてはダメというものはありません。もちろん、植物油(スイートアーモンド油と相性がいいです)を加えて使用することもできます。

 

ただし、一般に言われているのとは逆に、ラベンダーの飲用はあまり勧められません。飲用しても毒ではありませんが、その効果のほとんどが失われてしまうからです。このエッセンシャルオイルは皮膚塗布とディフューザー(芳香拡散器)などを使用した芳香浴に適しています。

 

ラベンダーの主要成分である酢酸リナリルとリナロールは副交感神経を活性化することがわかっており1)、過分な緊張や力を解き、心身をリラックスさせる作用があります。

 

ラベンダーに含まれる成分には催眠作用のある物質は含まれていませんが、睡眠の質と睡眠効率(就床時間に対する睡眠時間の割合)を向上させることがわかっていますし、睡眠の問題だけでなく、ストレスやうつ気分、不安、疲労感の緩和にも効果があると認められています2)

 

ラベンダーを数滴、太陽神経叢(みぞおち)や足の裏にゆっくりとマッサージしながら塗り込めば心身に安らぎを与えます。全く毒性のないことから、スイートアーモンド油を加えて背骨に沿ってマッサージするという方法なら、子供はもちろん、乳児にも使うことができます(ベビーマッサージにはエッセンシャルオイルの濃度を1%以下にします)。

 

ラベンダーには微量のクマリンと少量のケトン類が含まれているため、傷の治りを促す作用(瘢痕形成作用)と抗炎症作用があり、皮膚のさまざまトラブルによく効きます。一般的な皮膚炎、アレルギー性の皮膚炎、火傷、掻痒症、潰瘍、切り傷や打撲などの外傷に有効です。また、切り傷や火傷の際には、極めて優れた鎮痛作用を発揮し、皮膚に跡を残すことなく治癒させます。さらに、このエッセンシャルオイルは皮膚細胞にほとんど刺激を与えないので、軽い火傷には原液のまま塗ることができます(深く、広範囲に及ぶ火傷は専門家による治療が早急に必要です)。

 

また、血液循環障害のケアにも用いることができます。ラベンダーとヘリクリサム、ローズマリー・シネオールをブレンドすれば、血腫(打撲によるアザ)に対して素晴らしい効果のあるブレンドオイルになります。

 

原因のわからない、いわゆる神経痛とも言われるような四肢の末梢の痛みや痺れ(末梢神経障害)には、プチグレン(ビターオレンジ・リーブス)とローマンカモミールをブレンドして用いると有効な場合があります。帯状疱疹後の神経痛にはラヴィンサラとブレンドします。

 

ラベンダーの持つ鎮静作用は、呼吸器系の症状、特に不安神経症など極度の精神的緊張に起因する喘息発作に対する予期不安に効果的です。発作の不安で高ぶった神経を鎮め、呼吸を楽にします。この場合、ラヴィンサラとブレンドして用います。

 

昔から万能薬と評判のハーブで、何を使ったらよいのかわからないときにはラベンダーを使えと言い伝えられてきました。やさしい花の香りが疲れた心身を癒し、ストレスから開放してくれます。2~3滴を手に取り、少量のスイートアーモンド油を加えて首筋や肩、みぞおちに塗り、最後に足の裏に塗りながらマッサージを行うとリラックスしてよく眠れます。

 

子供の睡眠障害のケアにも適しています。 また、スキンケアにも肌質を選ばず使うことができます。皮膚のあらゆるトラブルに有効で、特にアレルギー性皮膚炎に適しています。

主な作用

・心身をリラックスさせます。

・免疫調節作用*があります。

・炎症を鎮めます。

・筋肉の緊張や凝りをほぐします。

・鎮痛作用があります。

 *免疫を暴走させることなく炎症などを鎮める作用

 

アロマテラピーに用いることのできる品質のよいエッセンシャルオイルを得るためには、デリケートな蒸留技術が要求されます。

 

Reference:

1)

Fayazi, S., Babashahi, M., and Rezaei, M. (2011). The Effect of Inhalation Aromatherapy on Anxiety Level of the Patients in Preoperative Period. Iran J. Nurs. Midwifery Res. 16, 278–283. 

Mahdavikian, S., Rezaei, M., Modarresi, M., and Khatony, A. (2020). Comparing the Effect of Aromatherapy with Peppermint and Lavender on the Sleep Quality of Cardiac Patients: a Randomized Controlled Trial. Sleep Sci. Pract. 4, 10.

2)

Dos, R. L. L., Dos, S.-J. J. G., Tufik, S., & Hachul, H. (2021). Lavender essential oil on postmenopausal women with insomnia: Double-blind randomized trial. Complementary Therapies in Medicine, 59,102726.

Hudson, R. (1996). The value of lavender for rest and activity in the elderly patient. Complementary Therapies in Medicine, 4 (1), 52-57.

Lillehei, A. S., Halcón, L. L., Savik, K., & Reis, R. (2015). Effect of Inhaled Lavender and Sleep Hygiene on Self-Reported Sleep Issues: A Randomized Controlled Trial. Journal of Alternative and Complementary Medicine, 21(7), 430-438.