エッセンシャルオイルの成分と含有率を明らかにするGC/MS(ガスマス)分析


エッセンシャルオイルの品質評価がGC/MS(ガスマス)分析によって客観的に行なわれ、その分析データがユーザーに公開されていることが必要です。

 

 例えば、店頭で手に取り、購入しようとしているエッセンシャルオイルが、100%天然であり、なおかつ水蒸気蒸留法によって完全蒸留されたものであるかは、テスターの香りを嗅いだだけでは、いくら鼻のいい人であってもなかなか判断できません。そのため、アロマテラピーのためのエッセンシャルオイルは、科学的な方法によって、客観的に品質評価がなされているものでなければなりません。

 

 現在、GC/MS(ガスマス)と一般に呼ばれている装置を用いた分析が、エッセンシャルオイルの品質評価を行なう上で、最も正確な検査方法だと言われています。

 

GC/MS(ガスマス)分析とは

GC/MS(ガスマス)とは、試料(エッセンシャルオイル)を気化し、成分ごとに分離するガスクロマトグラフという装置と、分離されたそれぞれの成分の分子量を測定する質量分析計(マススペクトロメータ)という検出器を組み合わせた分析装置のことです 。

 

アロマテラピーの処方にとってなくてはならない情報であるエッセンシャルオイルの成分とその含有率(%)の詳細は、このガスマス分析によって得ることができます。また、栽培や蒸留過程で混入する恐れのある農薬や有機溶媒などのさまざまな汚染物質の検出もガスマス分析によって行なわれます。

 

つまり、GC/MS分析は、エッセンシャルオイルの薬理作用を知る上でも、安全性の確証を得る上でも、今のところ最も確実で信頼の置ける検査方法なのです。

 

 エッセンシャルオイルの品質検査として比重や旋光度、屈折率なども従来は行われていましたが、これらの物性試験ではエッセンシャルオイルの不正や品質の良し悪しを見抜くことはできません。エッセンシャルオイルの品質検査は精度の高いGC/MS分析がすべてといっても過言ではありません。

 

GC/MS分析の結果は、通常 「分析表Analysis report」 と呼ばれるデータシートに掲載されています。ですから、アロマテラピーを行なうためにエッセンシャルオイルを購入する場合は、分析の結果が掲載されている「分析表」が、商品に添付されているか、あるいは、少なくとも購入の際に店頭で参照することができるか確認する必要があります。

 

「分析表」を参照し、これから使用するエッセンシャルオイルの「中身」を詳細に検討できるかどうかが、選ぶ際の重要な決め手となります。

 

 そしてもちろん、分析表がユーザーに公開されているか確認するだけでなく、そこに掲載されている情報が、果たして正しい情報であるのか、その信憑性を判断しなければなりません。分析表には、通常、成分組成 などの細かい情報がぎっしり記載されています。まず、分析表の信憑性の確証を得るために、次に挙げる情報が明記されているかチェックします。

 

①エッセンシャルオイルの成分が100%同定されているか

それぞれの成分含有率の合計(TOTAL)が100%、もしくは、それに近い値⋆であるか確認します。

例えば、GC/MS分析によって同定できた成分が70%しかないということは、残りの30%は何が含まれているのかわからないということになります。もちろん、30%もの含有成分が特定できていないエッセンシャルオイルは、アロマテラピーで使うことはできません。

⋆小数点以下の数値の処理の仕方で必ずしも100%にならない場合もあります。

 

②ガスクロマトグラフの波形が掲載されているか

ガスクロマトグラフの波形のピーク(波形の高さ)は含有率と一致します。

縦軸が含有率、横軸が時間を示します。分析の数値と波形が一致しているかどうか見ます。

 

③微量成分が抽出されているかどうか

主要成分だけではなく、マイナーな成分(セスキテルペンやセスキテルペノール、ジテルペン、ジテルペノールなど)、微量成分がきちんと抽出された完全蒸留のエッセンシャルオイルであることを確認します。例えば、クラリセージSalvia sclarea ならスクラレオール等、ユーカリグローブルス Eucalyptus globulusならグロブロール等、ラベンダー Lavandula angustifoliaならクマリン等です。

 

④瓶・外箱のラベルと同じロット番号が記載されているか

100%天然であるエッセンシャルオイルは、天然であるが故に、同じ種類であっても、ロットによって成分組成が微妙に異なります。ですから、例えば、真正ラベンダーを購入する際、真正ラベンダーの一般的な成分表を見せられても意味がありません。ですから、エッセンシャルオイルの瓶や外箱に貼られているラベルにあるロット番号と、分析表に記されているロット番号が同じであり、分析表に記載されている情報が、手にしている瓶の中身と同じものを分析したものであるかを確認します。

 

⑤分析が行なわれた日付、あるいは分析表が作成された日付が明記されているか

 

⑥品質管理責任者の名前

 

誰が分析についての責任を負うのかという情報は信頼性を示します。どんな検査・分析にも必要です。

分析表1
分析表3
分析表4