第17回 バジル Ocimum basilicum BS methylchavicol

■科名:シソ科

■抽出部位:花が咲いている地上部

■抽出方法:水蒸気蒸留法

■特性成分:

メチルチャビコール(エーテル類)70~90%

1,8-シネオール(モノテルペン・オキサイド類)1~4%

リナロール(モノテルペン・アルコール類)0.1~2% など

■特徴

100以上もの種があるメボウキ属(Ocimum)の植物は、インドが原産であったと言われていますが、現在では気候の温暖な世界のさまざまな地域で栽培されています。種類も形態もバラエティに富み、加えて数々の変種や雑種もあるバジルは分類の非常に難しい植物ですが、精油(エッセンシャルオイル)として蒸留されているのは下記5種類に限られています。

 

  Ocimum basilicum L.

  Ocimum canum Sims

  Ocimum gratissimum L.

  Ocimum sanctum L.

  Ocimum viride Wild

 

これら5種類のバジルからは、それぞれ成分も性質も異なったエッセンシャルオイルが抽出されます。

 

アロマテラピーで最もよく使われるのはOcimum basilicum L. です。フランス、北アフリカ、レユニオン島、コモロ諸島、マダガスカル、ベトナム、インド、エジプト、旧ユーゴスラビアなど、さまざまな国々で栽培され、生育環境によって抽出される精油の成分が異なります。

 

Ocimum はギリシャ語で「匂いがする・香りを嗅ぐ」という意味の言葉を語源とし、basilicum は 「王の」という意味のbasilikosという言葉に由来しています。バジルが「ロイヤルハーブ」と呼ばれる所以です。

 

バジルOcimum basilicum L. は一年草(1年の間に発芽、成長、開花、結実をして枯れる植物)で、寒さに弱く、温暖な気候を好みます。

 

旧ユーゴスラビア、トルコ、イタリアといったヨーロッパ産のバジルの精油はリナロールを特性成分とし、コモロ諸島やベトナム、インドといった亜熱帯の地域で栽培されているバジルはメチルチャビコール(エストラゴール)、北アフリカやエジプトなどの熱帯の地域のものはリナロール、オイゲノールといった成分を特性成分としています。

 

古代ローマの学者で「博物誌」を著したプリニウスはバジルを優れた薬草とし、さまざまな効能を認めています。曰く「バジルはサソリやカサゴに刺された場合の薬となる。気分を爽快にし、気を失った場合や眠気覚ましにもよい。胃にもよい。酢漬けにしたものはゲップや胃もたれを解消し、下痢止めの働きもある(……)」

 

アロマテラピーでは、主にメチルチャビコールを多く含むタイプのバジルが用いられます。メチルチャビコールの含有率が70~90%と高いバジルは、非常に優れた抗痙攣作用と鎮静作用があるとされています。神経の昂ぶりを鎮め、過度の緊張をほぐします。こと抗痙攣作用については、エステル類を多く含む他の精油よりも優れた効力があります。ただしバジルの場合、飲用によってこれらの効果を発揮します。

 

ストレスによる消化不良や胃腸の痙攣には、キャラウェイCarum carvi、ローズマリー・ベルベノンRosmarinus officinalis BS verbenon、ペパーミントMentha piperita、ディル(全草)Anethum graveolens、タイム・リナロールThymus vulgaris BS linalolなどとブレンドして飲用します。

 

胃潰瘍、胃のもたれや痛みには、ローズマリー・ベルベノン、ペパーミントそしてローリエLaurus nobilis とブレンドします。

 

胆汁の排出を促す作用もあることから、消化不良や乗り物酔いにも用いられます。大人にはローズマリー・ベルベノン、小児にはローズマリー・シネオールRosumarinus officinalis BS 1,8-cineole に、レモンCitrus limonun、ペパーミントをブレンドして飲用します。

 

ハーブのバジルは、イタリア料理では欠かせない食材として愛好されていますが、アロマテラピーでバジルの精油を使う場合も、飲用が最適の使用法となります。

 

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