初夏の散歩道。ミカンやユズなど柑橘の花が、風に溶け込むようにやさしく香り、どこからともなく漂っては、ふとした瞬間に心を和ませてくれます。ビターオレンジ(Citrus aurantium L. var. amara)の花から抽出されたネロリの精油の香りに似ています。
ネロリの精油の香りが、閉経後の女性の不調にやさしく寄り添うことが、臨床研究で報告されています。
63人の閉経後女性を対象に、ネロリの精油を0.1%または0.5%濃度で吸入してもらい、5日間の比較実験を行ったところ——
✅更年期特有の身体的な不快感(例:関節や筋肉の違和感、疲労感など)に関するスコアが有意に改善
✅性的欲求のスコアが有意に上昇
✅ 血圧(特に0.5%吸入群で収縮期血圧)が有意に低下
✅さらに、血清エストラジオール(E2)濃度もわずかに上昇する傾向が見られました
ただしこのホルモン変化は統計的な有意差は認められておらず、臨床的には微細な範囲です。つまりネロリの精油は、ホルモンを「直接増やす」ものではなく、ストレスや緊張を緩めることで、心身のバランスを穏やかに整える香りとして期待されています。写真はユズの花です。
Reference:
Choi SY et al. (2014). Effects of Inhalation of Essential Oil of Citrus aurantium L. var. amara on Menopausal Symptoms, Stress, and Estrogen in Postmenopausal Women: A Randomized Controlled Trial. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. doi: 10.1155/2014/796518